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『引き寄せの法則』の落とし穴 『思考は現実化する』のではなく『思考も現実もあなたの意識レベルのあらわれである』

ちょっと長いタイトルになってしまいました。なお、わたしは記事公開後にもタイトルの変更や、誤字脱字の修正や推敲による文章の書き換えをよく行っています。記事の趣旨を変えるようなことはありませんが、より読みやすく、分かりやすくするために常にアップデートできるのは書籍にないメリットだと思います。

 

さて今回は、いわゆる『引き寄せの法則』と呼ばれる概念や、その基本的な原理としてよく言われる(そのままのタイトルの本もあります)『思考は現実化する』ということについて、わたしの観点からどんなことが言えるか考えてみたいと思います。

 

引き寄せの法則』については現在ではさまざまな書籍で紹介されていますが、わたしの個人的な印象では、ヒックス夫妻の『引き寄せの法則 エイブラハムとの対話』という本が出た頃から広く知られるようになっていったと思っています。実をいうと、その昔流行ったmixiというSNSにおいて、わたしはこの本の内容について語りあうコミュニティを主催していました。さらに、その後もさまざまな著者の同様の趣旨の本を読み漁りました。

 

その当時のわたしの人生はというと、ちょうど覚せい剤に手を染めはじめた頃です。すでにギャンブルへの深刻な依存は長く続いていて、借金も大きく膨らんでいました。そのほんの数年前までは複数の会社で取締役をやっていて、ビジネスマンとしては非常に有能で収入もそれなりに多かったのですが、内面の未熟さを抱えたまま出世をしたために大きなストレスとプレッシャーを抱えていました。そして、その憂さを晴らすため、あるいは現実から逃避するためにギャンブルに逃げ込んでいました。薬物に関わりはじめたのも、初めの動機こそ好奇心や探求心からでしたが、その後はたんにハイを求めて依存していっただけに過ぎません。

 

そのような状況にあったわたしがなぜ『引き寄せの法則』なるものに関心をもったのでしょうか?  そもそもわたしは、それ以前から『引き寄せの法則』に限らず、いわゆる願望実現法や成功法則と銘打たれた本にはことごとく手を出していました。はっきりとした記憶はありませんが、そのような願望実現法、成功法則の類を読みつくしてあれこれ試していったものの、これはというようなものには出合えず、なにかもっと「本質的なもの」「本物といえるもの」はないのだろうか? と考えていたちょうどそんな頃にエイブラハムの引き寄せの法則が出たんだと思います。

 

自分で書いていても奇妙な話だなと思うのですが、ここまで読まれた方も、どこか変だと思いませんでしたか? というのも、この頃のわたしは世間的にはかなりの成功者でした。当時の言葉でいえばいわゆる「勝ち組」であったと言えるはずです。しかも、その世間的な部分の成功の陰では、それを実現するための法則とやらを学び、実践していたのですから、その点ではまさに思い通りになっているのです。でも本人はそのことは認めていませんでした。世間では羨ましがられるような地位や収入を得ていても、内面では満足よりも不満がまさっていて、つねに惨めな思いで暮らしていました。

 

その不満や惨めさとは、たとえば収入でいえば上には上がいくらでもいるという他人との比較からくる劣等感であったり、自分が思っているほど評価されていない(!)という不服であったり、取締役といっても雇われであり、実際にはオーナー社長の言いなりでしか動けないという屈辱感などです。それ以外にも、若くして責任の大きいポジションについたものの、人をどのように使えばいいのか分からないという不安や、いつ誰に裏切られるかもしれないという疑心暗鬼なども抱えていたと思います。また、プライドを保つためにつねに威張っていたり、若くてそこそこお金もあったものですから女性も思い通りになると思っているのに現実はそうでもなくて苦い思いをしたりなど、いま思い出して自分のことながら気の毒になってしまうほど、苦悩の多い人でした。

 

そんな頃に『引き寄せの法則』というものを知るのですが、引き寄せの法則とはなにかを簡単にまとめるなら次のように言えると思います。

 

  • 同じ波動を持つものは引き寄せあう(類は友を呼ぶ)性質がある
  • ゆえに、望むもの、望む状態に波動をあわせれば、それは手に入り、実現される
  • ただしこの物質世界では波動が現実化するのには時間がかかる
  • ゆえに、波動がぶれないようにしっかりとイメージし続ける必要がある

また、引き寄せがうまく働かないのはなぜか? ということの説明としては

 

  • 「お金が欲しい」という願望(波動)は実はいま「お金がない」と言っているわけだから、お金がないという波動が現実化されてしまっている

というようなこともよく言われますね。ほかにも詳しく挙げていけば色々ありますが、引き寄せの法則や願望実現法といったものの本質を検証するには、これくらいで十分でしょう。

 

さて、先に書いた以前のわたしの状況と、ここに挙げた引き寄せの法則の性質を照らし合わせてみると、こういうことが言えます。それは、意図して引き寄せようとしようがしまいが、それ以前にその人の現実はその人が引き寄せたものである、ということです。

 

同じ波動を持つもの同士は引き寄せあうのではなく、その人の持つ波動にあったものがその人の人生に(すでに、そしてつねに)あらわれている、ということです。

 

この世界のすべては意識が物質化したものです。ですから、波動とは意識レベルとイコールといって差し支えありません。そこで言い換えると、『その人の人生にあらわれるものはすべて、その人の意識レベルが投影されたものである』ということです。引き寄せの法則は、見かけ上は機能しているように見えることがあります。でも、例えば「お金」とか「立派な車」とか「豊かな人間関係」とか「幸せな家庭」という言葉にそれぞれの波動があるのかというと、そうではありません。

 

それらはすべて、その人の意識レベルからくるイメージであり、意識レベル125の欲望のレベルにある人物が望む「お金」や「豊かな人間関係」は意識レベル125の波動をもっているのです。同じ「お金」と「豊かな人間関係」でも、意識レベル500の人物にとってのそれは、意識レベル125の人が抱くものとは波動が異なるというわけです。そのような人(意識レベル125の欲望の領域にある人)は「お金」を手に入れても、そのことがさらなる欲望を生み出します。その人が考える豊かな人間関係とは自分に都合よく働いてくれる手下や虚栄心を満たしてくれる美女に取り囲まれて生きることであったりするでしょう。

 

つまり、当時のわたしの意識レベルが正確にいくらくらいかは分かりませんが、仮に175くらいであったとします。かなり低い数値ですが、当時のわたしはプライドに支配されていましたから、その程度のネガティブな意識レベルであったとみて間違いはないと思います。その頃のわたしは「引き寄せの法則」を使って現実に引き寄せようとしているもの、例えば「もっと高い収入」や「より高い評価」「女性の関心」といったものに波動をあわせようと頑張っていたわけですが、そうしたものの意識レベルはプライドの意識レベルである175や、それを下回る欲望の意識レベル125に該当していますから、合わせるもなにも、自分自身がその波動でいるわけです。

 

先にも少し触れましたが、この時のわたしの願望、つまり引き寄せようとしていた対象は実際のところ、引き寄せていたとみることもできます。なぜなら収入はすでに(今のわたしから見れば)十分にありましたし、冷静に考えるなら高い評価を受けていたからこそのそのキャリアであったわけです。また、女性から好意を寄せられることも決して少なくはありませんでした。結局のところ、本人の欲望に際限がなく、足るを知るということがなかっただけのことにすぎません。法則が働かないときの説明とされる、『なにかを望むということは、それを持っていないからだ』という考えを持ち出すまでもないことです。

 

このように、その人が「どんな現実を生きているか(すでになにを引き寄せているか)」と「なにを望むか(これからなにを引き寄せようとするか)」、そして「なにを手に入れるか(これから引き寄せるもの)」は、その人の意識レベルが大きく変わらない限り、すべて同じ波動のものなのです。『思考は現実化する』というのもやはり同じで、思考というものも意識レベルのあらわれです。どのような思考をするかによって意識レベルが決まるのだという風に考えている人がほとんどだと思いますが、実際は反対で、その人の意識レベルにあった思考が「やってくる(引き寄せられてくる)」のです。ですから、125という欲望の意識レベルの人の頭には欲望に関する思考が渦巻いています。その思考でどんなものを引き寄せようとしても、やってくるのは欲望のレベルの願望となります。言い換えると、願望そのものが意識レベルによって引き寄せられているのです

 

ここで参考までに、ホーキンズ博士の『パワーか、フォースか』に掲載されている意識のマップの図表を引用しておきます。

 

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この表から一例として意識レベル125(欲望)について考えてみましょう。意識レベル125の人の人生は神の視点からみると「否定」です。つまりその人の人生はことごとく否定されることの連続であるといえます。このため、本人は人生に「失望」していますが、それは「欲望」が満たされることがないからです。彼は欲望を満たすことを「切望」し、「金の奴隷」になったり「ギャンブルやセックスや薬物に依存」したりします。

 

意識レベル125の人の現実はこのようなありさまですが、その中でどんなものを望み、なにを引き寄せようとしたところで、本質的にはなにも変わることはありません。仮にある欲望の対象を引き寄せたとしても、そのためになにかの奴隷と成り下がることを余儀なくされたり、引き寄せたもののその結果に失望し、あらたな欲望を強化することにつながっていきます。

 

これでだいたいお分かりいただけたかと思いますが、結論を言いますと『引き寄せの法則』はなんの役にも立ちません。そもそも願望実現や成功というものは「幸せになるため」のものであるはずです。欲しいものを手に入れたり、他人から成功者と認められることでは、決して幸せにはなれません(一時的な喜びはあるでしょうけれども)。幸せというのは、苦しみの少ない(あるいはまったくない)状態のことです。喜びさえも簡単に苦しみに転じてしまうのがこの世界の定めですから、喜怒哀楽に巻きこまれない平和な心で生きていけることこそが、人間にとって真の幸せと言えるでしょう。

 

そのためには、自分の意識レベルを上げるしか道はありません。意識レベルが上がっていくと、それ以前には願望の対象であったことに関心がなくなっていきますから、いまのあなたが望んでいるようなものはなにひとつ引き寄せることはなくなるかもしれません。そう考えるとなにかつまらないことのように思えるかもしれませんが、それはあなたがいま、あなたの意識レベルで考えるからです。もしつまらなそうだなとあなたには思えるとしたら、そのようなあなたの中にある望みが、実はあなたの苦しみや悩みを作り出している原因になっているかもしれないと熟考してみてください。

 

最後にもう一度まとめておきます。意図して引き寄せようとしようがしまいが、それ以前にその人の現実は、その人の意識レベルが物質世界に投影されてあらわれたものです。ですから意識レベルが変わらない限り、なにをどのように望んでも、これから引き寄せるものは(たとえ見た目が変わったとしても)、本質的にはいまある現実となんら変わりがありません。

 

なお、本当に言うまでもないことでしたが蛇足としてつけ加えておきます。願望を持ち、それを叶えようということは悪いことでもなんでもありません。でも本気で叶えたいほどの願望なら、なにもせずただそれをイメージして波動を合わせて、などという呑気なことをするより、具体的に実現のための行動をとるべきでしょう。それこそが願望を実現するための一番の方法ですね。